生徒達は肩を竦めたり呆れたり怒ったりしながら、徐々に席を立ち始める。中には一部だが、座ったまま弁当箱を取り出す生徒も居た。俺がとりあえず席に戻ると、ハルが声を掛けてくる。｢昼、ど內視鏡中心する？｣｢一応言うと、弁当はない｣｢俺もだ。エートは？｣｢俺もありません｣ハルがエートにも聞いている間に、俺はツァイに声を掛ける。｢ツァイ、お前は？｣｢ないわよ。でも、ククルは持ってきてるから、購買にして此処で食べるわ｣この学園で昼食を取る方法は4通り。まず、寮にある食堂を使う方法。もちろん、寮内なので男女別。次に、学園内の購買店で買う方法。購買店の近くには少しだが座れるスペースもあるし、園内のベンチを使用するのも手。ツァイのように、教室で食べても構わない。それからあと2つは、自分で作る、という方法。朝作って弁当を持ってくるか、一度部屋に戻って食べてくるか、だ。ツァイの答えに、俺たち3人は顔を見合わせる。最初に口を開いたのは、エートだった。｢散歩がてら食べる場所を探して、見つけてから購買に行ってみるのはどうでしょう？｣｢いいかもな。すぐ行くと混みそうだし｣｢んじゃ、それに決定で｣俺たちのクラスは早めに終わったようで、今日の昼の休みは結構長い。エートの案に不満は何もなく、俺たちは連れ立って教室を出た。広い学園の敷地には、所々にベンチが置かれている。今日は天気も良く、外でランチタイムと洒落込んでもなんら支障はない。つまり、絶好の散歩日和りでも、ある。3人で外を歩けば、ハルに何かと生徒の視線が集まってくるのは御愛敬。もう俺は慣れた。エートもやはり慣れたようで何も言わなかったが、慣れたからと言って煩わしくないわけではない。俺たちは自然と、人の少ない方へと足を向けた。｢……あ、太陽が重なってる｣人気のない裏庭をのんびり歩いていると、ふと空を見上げたハルがそう言った。言われて頭上に目をやれば、確かに2つあるはずの太陽が1つしか見えない。｢本当なら今から昼か。上級生も出てくるかな？｣この世界の太陽は、西と東から同時に上がり、同じ速度でまっすぐ東と西へ向かう。つまり、中点では2つが重なり、1つに見えるわけだ。｢上級生も同じ教室棟かすぐ後ろの教室棟のはずですから、こちらには来ないと思いますよ｣｢来るとしたら物好きだけか｣｢……そうなると、俺たちは物好きなのか？｣
