金兵衛は、武士として元服し、武士として生きる心構えだったのであろう。しかし、現実は、野球部教祖という立場にあり、皆の努力を知っており、我侭を通す気にもなれなかったのであろう。（それが香港豪宅かっていても武士になりたかった訳か…。）隼人は、そう考えると、「よし、では、元服の儀式を開くか。島の者に聞けば、作法も分かるじゃろ。」と言ったが、金兵衛は首を縦には振らない。「元服したいのでは無いのか…？」隼人が続けて質問を投げると、「元服したいと言うよりも…実家の事が心配なんじゃ…。 」と、金兵衛が返した。その金兵衛の答えに隼人はハッとした。（そうか！金兵衛は、ただ元服したいんじゃなく、一族の後継ぎとして元服したいのか！）「そうか。金兵衛。実家に戻って元服したい訳じゃな？」隼人がそう聞くと、ようやく金兵衛がコクリと頷いた。「そういう事か…。 證券行 」そう言った隼人は、視線を虚空に漂わせると、（金兵衛の実家…。三河か…。三河………裕司…竹千代は元気にしてるだろうか…。）隼人自身も、竹千代の事を思い出してしまった。
